日本高血圧学会と日本循環器病予防学会が共同のもと、2015年に「循環器病予防療養指導士」認定制度が始まりました。2018年より日本動脈硬化学会、2020年より日本心臓病学会が加わり4学会の共催となりました。
2022年4月1日からは名称を「循環器病予防療養指導士」と改称いたしました。
この制度は、循環器病の主たる原因である高血圧や脂質異常症等の生活習慣病の改善・予防およびその他の危険因子の管理に関する療養指導を行うために有能な専門的知識および技術を有する職種の資質向上を図り、そのことにより循環器病の予防や病態改善により、国民の健康増進に貢献することを目的として発足いたしました。この資格を取得した方が確かな知識と経験を身につけて、さまざまな場面で対象者・患者に適した助言・指導を行うことで国民の健康が増進することを期待しています。
日本には約4300万人の高血圧患者がおりますが、その管理は脳、心臓、腎臓疾患を未然に防ぐための最前線です。適正な血圧を維持するためには、食事、運動、禁煙、減酒、睡眠、そして必要な薬物治療など、あらゆる側面からのアプローチが欠かせません。この取り組みには、医師のみならず、保健師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、公認心理師、医療心理士、臨床検査技師、健康運動指導士といった多様な専門職が連携し、真のチーム医療を実現することが重要です。特に、専門知識を持った「循環器病予防療養指導士」は、これらの職種をつなぐ重要な役割を果たし、それぞれの立場で患者さんの未来の健康の鍵を握っているともいえます。
日本高血圧学会は、「良い血圧で健やか100年人生」をスローガンに、「日本高血圧学会みらい医療計画」に基づき、国民の健康寿命延伸や生活の質向上に貢献すべく活動しています。多くの方が「循環器病予防療養指導士」を目指し、また現場でその知識や経験を活かしてご活躍されることを願っております。
「日本循環器病予防学会」は、1966年に社団法人「日本循環器管理研究協議会(日循協)」を始まりとしています。日循協は、当時猖獗を極め、日本人の死亡原因の第一位であった脳卒中(特に脳内出血)とその最大の原因である高血圧の制圧という目的で設立され、当初から循環器病の予防を目指す医師、保健婦・看護婦(当時の名称、現、保健師・看護師)、栄養士・管理栄養士、行政担当者等によって構成されていました。当学会と日本高血圧学会が共同で開始した「循環器病予防療養指導士」制度は、この設立当初からの理念を受け継いだとも言える事業であり、様々な職種が取得可能な、脳卒中や心臓病を予防するための専門資格です。その後、日本動脈硬化学会、日本心臓病学会も加わった4学会共通の資格となって現在に至っています。高齢社会における国民皆保険の維持のための医療費適正化政策、その流れの中での特定健診・特定保健指導制度の開始などで、わが国の循環器病予防のあり方が大きく変わりつつあります。その中で多職種共同と生活習慣の改善、健診制度制定に向けた行政への働きかけ等を行ってきた当学会の取り組みの方向性は決して間違っていなかったことが証明されました。そして今後の循環器病予防を行っていく上で基幹となるのは、設立の理念を色濃く受け継いだ循環器病予防療養指導士であると考えます。循環器病予防療養指導士の養成カリキュラムは、公衆衛生から臨床まで脳卒中や心臓病の予防にとって必要な知識と技術が得られる充実した内容となっています。また非常に多くの職種に受験資格があるのも大きな特徴です。是非、多くの方にこの資格を取得していただき、一緒に国民の健康や生活の質の向上に取り組んで行くことができればこれに勝る喜びはありません。
日本高血圧学会と日本循環器病予防学会が共同で行っている「循環器病予防療養指導士」認定制度に、2018年より日本動脈硬化学会が新たに参画しています。日本動脈硬化学会は動脈硬化性疾患の成因、病態、予防や治療に関する研究の発展、向上を図るとともに、国民に対する啓発活動を行うことを目的とした学会です。学会メンバーは、循環器のみならず、脂質代謝、糖尿病、病理、疫学などはじめとした様々な専門領域にわたって学際的に活動している点は、皆さんがいろいろな職種から集まっていると似ています。メディカルスタッフが勉強してもらえるようなアクティビティも用意しています:https://www.j-athero.org/jp/meeting/medicalstaff_info/ 動脈硬化学会は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』や『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド』を発行して啓発活動を行なっています。冠動脈疾患や脳卒中などの動脈硬化性疾患を予防するためには、メディカルスタッフの皆さまに具体的な生活習慣改善や薬物治療などに対する知識と経験を身につけていただくことが重要です。日本動脈硬化学会が「循環器病予防療養指導士」認定制度に参画することで、患者さんに専門家として適切に指導が行える人材がさらに養成されることを期待しています。日本動脈硬化学会の参画によって追加される脂質関連の履修単位は、4つの学会主催の講演会などで取得できます。これらの専門知識と経験を患者さんの指導に活かし、国民の健康寿命が延伸し、ながくWell beingでいられるよう一緒に頑張りましょう。
日本心臓病学会は1987年に設立されて以降、臨床心臓病学の発展に主眼を置いて活動してまいりました。その中では医師のみならずメディカルスタッフの教育・育成にも力を注いでおり、1999年からファンダメンタルコースとアドバンスコースの2コースの教育セミナーを毎年継続して開催しております。このような流れの中で2020年4月より「循環器病予防療養指導士」制度に参画することとなりました。
循環器領域は心不全、不整脈、虚血性心疾患、イメージング、リハビリテーションなどさらにいくつものサブスペシャリティー領域に分けることができますが、本学会が目指す方向性はgeneral cardiologyに軸足を置いた活動であると考えており、その中で循環器疾患の発症予防、あるいは発症後の増悪阻止という観点にたちますと高血圧をはじめとする生活習慣病への対応は非常に重要な位置づけにあります。生活習慣病のコントロールは、薬物治療だけでは十分ではなく、日常生活に関する助言と指導を継続的に行うことが重要であり、そこには生活習慣病について深い理解を持つメディカルスタッフの介入が欠かせません。
日本心臓病学会は広く循環器領域をカバーする学会として「循環器病予防療養指導士」制度に貢献をしてまいります。多くのメディカルスタッフが「循環器病予防療養指導士」の資格を取得され、その力を現場で発揮していただくことを願っております。
循環器病予防療養指導士認定事務局
住所 | 〒113-0033 東京都文京区本郷三丁目28番8号 日内会館2階 (日本高血圧学会内) |
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