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自動診察室血圧automated office blood pressure (AOBP) について
日本高血圧学会 日本版SPRINT研究検討ワーキンググループ 
 
米国の臨床試験SPRINTでは、通常の外来診察室血圧と異なる自動診察室血圧(AOBP:automated office blood pressure)の収縮期血圧値 120mmHg未満を目標とした積極的な降圧治療によって、脳心血管イベント発生率が大きく低下することが示されました。 
AOBPは、患者が、医療機関内の医療従事者のいない1人静かな環境下で、自動的に3回続けて血圧を測定するようにプログラムされた自動血圧計を用いて測定した血圧値です。日本では 医療機関内にこのような場所を確保することが困難なこともあってAOBPはほとんど普及していません。一方、日本では家庭血圧測定が広汎に用いられており,2019年の高血圧治療ガイドライン (JSH2019) でも推奨されています。しかし、AOBPと家庭血圧との関連性も明らかになっていません。 
そのため日本高血圧学会では、「日本版SPRINT研究検討ワーキンググループ」 を組織しAOBPに関する情報収集を行うとともに、家庭血圧値、AOBP、および通常実施されている方法により測定された診察室血圧値の比較を行うため、COSAC (COmparison of Self-measured home, Automated unattended office and Conventional attended office blood pressure) 研究を推進しています。  
ここでは、2019年6月21日に学会誌 「Hypertension Research」電子版で公開されたCOSAC研究の結果をもとに、AOBPについて、現時点での日本高血圧学会としての考え方をお示しします。 
 
[血圧測定値の比較結果] 
研究登録時に測定した 3種類の血圧に関する比較分析を行いました。 
AOBPと家庭血圧は全体の平均値が近似しているものの、お互いの値がかなり異なっていることがわかりました。特に、収縮期血圧同士では相関係数 (r値)が 0.1未満であり、ある患者の AOBP値から、その患者の家庭血圧値を推定することや、反対に家庭血圧値から患者の AOBP値を推定することは、ほぼ不可能と考えられました。 
通常実施されている方法により測定された診察室血圧と AOBPの値は相関が比較的高く (r値 0.73以上)、AOBPは通常の診察室血圧に近い指標であることが明らかとなりました。ただし、通常の診察室血圧は AOBPに比べて平均で 11/4mmHg高い値を示しており (女性では男性より差がさらに 3mmHgほど広がります)、医療従事者の前で測定されることで生じる狭義の白衣効果が、この通常診察室血圧値上昇の一因となったものと考えられました。 
なお、1機会 (1回の外来受診中)に 3回測定されたAOBPは安定した値を示していました (r値 0.90以上)。 
 
[AOBP測定について] 
今回の研究結果から、AOBPは家庭血圧とは異なる値を示すことが明らかになりました。また、SPRINTでの収縮期血圧に関する降圧目標120 mmHg未満と140 mmHg未満の比較は、通常診察室血圧レベルでおよそ130 mmHg未満と150 mmHgの比較であったと解釈することもでき、JSH2019における74歳未満の患者の推奨降圧目標130 mmHg未満を支持する結果と考えられます。さらに、家庭血圧が診察室血圧よりも予後の評価に優れることはガイドラインに示している通りです。 
以上のことから、日本高血圧学会は、AOBPを家庭血圧の代替指標として使用することを推奨しません。JSH2019の第2章およびCQ1に記載されているように、診察室血圧と家庭血圧の値に乖離があるような場合を含め、家庭血圧を指標とした高血圧の診断・治療を推奨いたします。 
 
本件に関する情報提供、お問い合わせ:  
日本高血圧学会 (e-mail: office@jpnsh.jp) 
 
 
 
詳細は下記のPDFにてご覧ください。

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